ピーピングトムの「ファーザー」を観てきた。ピーピングトムは、ベルギーのダンスカンパニーで、現代のピナ・パウシュと呼ばれている。ピーピングトムとは「覗き見する男」という俗語。その名の通り、舞台で起きている出来事を、客席から覗き見している感覚実際は普通に観ている。ダンスの舞台なので、芝居とは趣きが違う。所々に台詞らしきものがあるが、それは内容をイメージする材料に過ぎない。理解するのではなく、感じる。五感をくすぐる、非常に素晴らしい舞台だった。ドイツのピナ・パウシュ日本のNoizm、ベルギーのピーピングトム、何れも好きな現代舞踊集団である。

pEOS M5 + New FD 50mm 1.2L

兵庫県立芸術文化センター  中ホール。2階席から見下ろし、目をカメラのようにして観ていた。ここは、終焉を待つ老人ホーム。薄汚れた水色の壁。広い舞台一面に、所々黒ずんだ赤いカーペットが敷き詰められている。照明は下手の扉から、まるで強い西日のように赤いカーペットを照らす。ダンサーは光を受け、長い影が踊る。光の届かない舞台の端では、それぞれの役者が、それぞれの役を演じる。舞台を見ながら、頭の中でカメラが動く。カメラはダンサーの手や足を交互に追い、扉の光、長い影。激しく踊るダンサー。背後の役者。カメラ(目・意識)は全体を見ているようで、部分的に見ている。頭の中で自由に映像化しているようだ。おそらく、作る側も映像を意識していると思う。広い空間、照明、演出、舞踊、音楽すべてを駆使し、生のライブでありながら、映画的(前衛映画)に感じた。

ピーピングトムを観た翌日、いつものようにスナップ撮影に出かける。昨日の影響か、覗き見のような写真が撮りたくなった。ブロック塀の隙間とか、積み上げた建設資材の間とか、普段とは違う構図を探して撮る。ミュージックビデオのヒントになる。しかし、 そこに写る人は、秘密の過去があるように見え、見てはいけない感じの写真になった。やはり、覗き見はモラルに反する。これっきりにしよう。でも、ピーピングトムはまた観たい。

p2.jpgEOS M5 + New FD 50mm 1.2L

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