遺影を3回撮っている。そのうち仕事で撮ったのは2回。お名前は出せないが、お二人とも歌手。まだまだお元気。そのお一人で、70代女性の遺影は、私と娘さんが預かっている。ご主人には内緒なのだ。お葬式の祭壇に飾る写真と、スライドショー用の写真を撮影している。スライドショーをすぐ作るのは、何だか気が引けて作っていなかった。だが、いつ急なことが起こるか分からない。私自身も何が起こるか分からない。撮影して2年になるが、最近スライドショーを完成させた。

仕事ではない遺影は義父の写真。3年前のお正月、家族が集まった際に撮影した。「わしも、そろそろやで、永ないで。」と元気に話しながら「葬式の写真撮ってくれる?」と言われた。丁度カメラはEOS 6Dを持っている。レンズはSmmicron R 50mm。遺影の撮影にはベストセット。しかもストロボまで持っている。お正月なので、少し気合いが入っていたのが良かった。

その年の春、義父が倒れ施設に入る。翌年に亡くなった。大往生だった。義父とは、カメラと大峯山という共通の話題があった。私は毎年、夏になると大峯山に登っている。義父も若い頃は大先達として登っていたが、もう何十年と登っていない。代わりに私が写真を撮って、山の話しをしていた。

oo.jpgEOS 6D + Angenieux  zoom 70-210mm 3.5   大峯山の中腹にある休憩所

「親しい人が亡くなったとき、その人から近親の人へ贈り物がある」と、聞いたことがあった。私の奥さんやその妹に、それぞれ贈られてきた。それは物だけでなく、よい出来事もある。妹は、ある有名サッカー選手のユニフォームが抽選で当たり、ピアニストの奥さんは、大きな仕事の依頼が来た。

初七日が過ぎた頃、ライカカメラの先輩が「これ、使わんから、あげるわ」と、頂いたのがAngenieux  zoom 70-210mm 3.5だった。「ほんまにー」と、お礼もそこそこに(失礼な奴だ)レンズを覗く。カビがある。それなりの理由があってのことだが、有り難く頂いた。これはお義父さんからのギフト? 私がAngenieux zoom 45-90mmを仏(ほとけ)のアンジェニューと呼んでいることを知っていたのか? 流石、お義父さん。早速、オーバーホールをして使いはじめた。そして今では、ミュージックビデオ撮影に欠かせないレンズになっている。仏(ほとけ)のアンジェニューは、ほんまになった(本当になった)。

yama-1.jpgEOS 6D + Angenieux  zoom 70-210mm 3.5   大峯山山頂

NANU ARTS FILMS ホームページ




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です