編集はベストショットを選ぶことから始める。楽曲のここのAパートはこのカットがいいとか、Bはこれ、みたいにドンドン選んで行く。同じパートでいいカットは複数あるが、全部残して当てはめていく。大体どのパートも、12カット撮影している。ピントがズレてるとか、手ぶれがひどいものはその場で削除。その中で、ベストカットは24カット。それらを組み合わせ、流れが自然になるまで何度も編集している。

この作業だけで完成すれば、最高のミュージックビデオ。高級蕎麦屋のざる蕎麦と同じ。だが、少し変化を加えたい。インサートカットや、カット間に効果を付けていく。ざる蕎麦が、天ざるになる。こうして編集していくのだが、ミュージックビデオは蕎麦が命。演奏シーンが蕎麦なら、天ぷらは特殊効果。このバランスが、重要。主観だが、最近のミュージックビデオは天ぷらが多い気がする。忘れてならないのが、音楽「つゆ」。天ぷらが多いと、つゆが減る。このことを考慮しながら作業を進める。

話が脱線する前に軌道修正。編集のポイントは解説が難しいいので、割愛するが、参考にしている映画を紹介したい。バンドの場合は、やはりアクション映画からヒントを得ていることが多い。「ボーン・アルティメイタム」ポール・グリーングラス監督のボーン・シリーズ第3作目。この映画の特徴は、異常に細かいカット割り。映画の平均が約2,000カットのところ、4,000以上あるそうだ。ただ、ずっと細かいのではなく、時々目にも留まらぬ超高速カット割りで、緊張感を高めている。大体が格闘シーンやカーアクション。それと、マット・ディモン演じるジェイソン・ボーンの素早い判断力や、決意を表現する場面によく使われている。

TDC-YOU 005の紹介ビデオを作ったとき、この超高速カット割りを使用した。ポール・グリーングラス監督へのオマージュを込めている。実際のレコーディングで、バッキングから徐々にギターを重ね録りしていき、白熱のギターソロまで収録している。プロモーションビデオなので、超高速カット割りは一部だけだが、印象的になっていると思う。

「ボーン・アルティメイタム」の特徴にもう一つ。セリフが少ない。これだけカット数が多いと、見ているだけで情報が全て伝わってくる。状況説明は元より、登場人物の心の動きまでも表現されている。日本映画やドラマのように、頭の中の声とか、独り言も一切ない。ボーンの相方ニッキー(ジュリア・スタイルズ)なんて、映画の中盤からラストシーンの約40分間、一言もセリフが無い。なのに重要な役割でずっと出ている。それと、ボーンを狙う暗殺者デッシュは、登場から死ぬまで全然セリフが無かった。ボスとの連絡はメール、徹底的だ。ジェイソン・ボーン、この3作品は約30回以上は観ている。そして、観る度に「また、ボ~ン。」と、何処からか声がする。

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