狭い場所での撮影は、工夫が必要だ。映画でも、狭い部屋のシーンはよくあるが、それは大体約120分ある内の数シーンである。ミュージックビデオはワンシチュエーションが多く、その全編が狭い部屋で撮影した場合、かなり計算しないとダレた作品になる。ここで実際に撮影したミュージックビデオを例に、私なりに工夫した作品をご覧いただきたい。

種子田 健 meets TDC YOU12.jpg6D + Angeneix  Zoom 70-210mm  3.5 ムービーからの切り出し 

本編はTDC-YOU BASS DIを紹介する、ベーシスト種子田健のドキュメンタリービデオ。ベース、ギター、ドラムの3人によるスタジオセッションライブ。ライブ演奏なので、音楽録音と撮影を同時に行う必要がある。また、後から映像を加えることが出来ないので、カメラは3台使用。広角レンズの使用は、極力控えめにしている。

まず、主役を出来るだけ遠く配置。メインのカメラ6Dは、望遠ズームAngeneix 70-210mm 。まずこれを210mmでアップになる位置にセットする。2台目のカメラ6Dは、中望遠ズームAngeneix 45-90mmを使用。主役の位置よりカメラ側に近いギター、ドラムを狙らい、90mmでアップになるようにしている。3台目は80D。Elmarit R 24mmで撮影している。あえてAPS-Cに広角レンズを使うのは、歪みを極力抑えるためである。

演奏が始まると、被写界深度を深くしたElmaritを保険にして、2台のカメラを交互に操作する。ズームしたり、アングルを変えたりして撮影。操作中のカメラは三脚ごと持ち上げて、手持ちで撮影している。セッションはアドリブ演奏なので、何が起こるか分からない。ムードを感じ、次の動きを予測して3台のカメラを同時に操作する。しかもマニュアルレンズ。皿回しに似ている。

照明は、ただ室内を明るくするような「いかにも」は避けたい。やや暗いながらも窓があるので、自然光のようなライティングにしている。ミックス光を避けるため、太陽光に近いLED単板を1ヶ所設置。そのまま一方向から最後まで撮影している。

インタビューシーンも同様、窓の近くからライティング。ただ撮影時間が夕方になり、光量が少なかったので、自然光のような照明ということなる。カメラは2台、Angeneix 45-90mm(6D)と、Elmarit R 24mm(80D)。1ヶ所からの照明はアングルによっては陰になるが、そこがいい。その場の空気感がリアルになる。インタビューは、私の質問に答える型で行った。決め事もなく当然、台本もない。ライブもインタビューもインプロビゼーション。種子田氏の語り口調と演奏には共通点がある。ひらめくアイディアを、無駄無く、確実、丁寧に伝える。種子田氏そのものが音楽なのだ。

tn.jpg6D + Angeneix  Zoom 70-210mm  3.5 ムービーからの切り出し

※ 出演者詳細については、YouTube コメント欄をご覧ください。

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