ウィンドウ越しに写真を撮るのが好きだ。都会に出ると、目のやり場に困るくらい被写体の宝庫、くらくらする。スナップ撮影なら、35mmか50mmでも十分寄れるので撮りやすい。最近は標準レンズを使うより、EOS M5にNew FD 50mm 1.2Lを付けて中望遠80mmで撮ることが多くなった。

ガラス越しの被写体を撮るとき、反射を防ぐためにPLフィルターを使うが、私はあえて使わない。ガラスに映る光や反対側の風景と、狙った被写体が重なる感じが好きなのだ。これは、ガラスに限らない。何かに反射して映っている状況に出会うと、ついシャッターを切りたくなる。例えば車のガラスや水溜まりに、雲が映っている時とか。誰でも経験があるのでは?

k-1.jpgEOS M5 + New FD 50mm 1.2L

ガラス越しに被写体を狙いながら、反射する景色を撮る時、ピントをどちらに合わせるか迷う。私の場合、開放で被写体にピントを合わせてから、少しづつ絞っていき反射する景色のボケ具合を調整して撮る。思いどうりのバランスで撮れた時は「よっしゃ」とつい声が出してしまう。状況があまりに美しい時は、被写体とのバランスを逆にして2枚撮ることもよくある。このとき、一度決まった絞りのまま、ピント位置を変えて撮る。

ガラスやコップなど何かに反射させて撮影することは、映画でよく使われる手法だ。効果としては、その場の状況説明と同時に、隠された秘密や意味のようなものが加えられ、神秘性を増す。最近見られる映画やドラマは深い意味もなく、オシャレな絵として撮っているものが多い。

80年代のBBCテレビドラマで「シャーロックホームズの冒険/ジェレミー・ブレット」があった。これは推理ドラマで、この撮影手法がよく出てくる。犯人の動揺やホームズの推理場面などは実に秀逸。あるエピソードで、ホームズに話す依頼人の顔を、汚れた小さな鏡に写して撮っていた。その話の内容が、いかに不可思議な事件であるかを強調している。その他に、ウィスキーが入ったグラス越しに、シャーロックホームズが事件について話している。この事件がホームズにとって、腑に落ちないもどかしさを表していた。このドラマはお皿、フォーク、ろうそく台、ペーパーナイフ他、メチャクチャ見え難い物質でも、反射していれば何でも使っている。ちなみに、このドラマは是非、原語で観て欲しい。ジェレミー・ブレットの演技が面白い。まるでダウンタウンの松っちゃんみたい。エキセントリックなのだ。当時、日本で放映された時は、あまり人気がなかったそうだ。その理由はホームズの吹き替えが、太陽に吠えろの山さん(露口 茂)だからだと思う。冷静なのだ。

何か越しに被写体を撮る。意図を持って、アングルやボケ具合をコントロールして撮影すると、状況に深みを与えることができる。スナップ撮影でも、頭の中でイマジネーションを膨らませて撮ると楽しい。それより難しく考えずに、ただ同時に2つの世界が映っていると思えば、それがファンタジーになる。

G-1.jpgEOS M5 + New FD 20-35mm 3.5L

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