映画を観るとき、ミュージックビデオ制作に役立つヒントは無いか、常に意識している。その中の一つで映画のトーン(色目)について書いてみたい。

参考映画は「パッセンジャー」。アン・ハザウェー主演のサスペンス。飛行機事故で奇跡的に助かった5人をケアするために、カウンセリングをするセラピストのクレア(アン・ハザウェー)の話し。助かったといっても、事故のショックで精神的にダメージを受けた人達。事故の原因(その時の状況)を聞いても、それぞれが違ったことを話す。そのうちに、パイロットの人為的ミスか、飛行機の整備不良か曖昧になり、飛行機会社の隠蔽工作が始まったかのように、物語はサスペンス的に進んでいく。

初めは、サスペンスなのに映像が綺麗で、スリルが無いと思って観ていた。どことなく、北欧映画のトーンなのだ。2回観て分かったことだが、全てアースカラーで統一されていたのだ。しかも、ブルー、グレー系。時々茶色が出ても、それは木彫の家具だけ。大体の時間帯が夜か夕方。昼間のシーンはどんより曇っていた。すれ違う車はブルー、グレー、ベージュ、黒。バイクも黒。衣装も紺色やグレーなど全員アースカラー。部屋の壁も水色か、アイボリー。全てが用意周到。

全体のトーンに統一感があるだけで、作品が引き締まって見える。これを参考にした私の作品は少ないが、前にも紹介したミュージックビデオで、INHALEDark Daysは、それにあたる。全体的にグリーンがテーマカラーになっている。衣装をグリーンにする訳にはいかないので、黒にして、編集時のカラコレでグリーンを強調している。これはバンドからの意見を取り入れた。

pp-1.jpgEOS 6D + Summicron R 50mm

計算された映画は大体テーマカラーがある。しかし、ここまで違和感無く自然な映画は珍しい。他にもテーマカラーを強調した映画をいくつも観たが、この映画は少し違う。単なるテーマカラーではなく、物語に必要な隠された情報だったのだ。(ここからは、ネタバレになります。)

何日か、カウンセリングが進むうちに、参加者が減ってくる。来ていない人はどうした? 飛行機事故の原因が整備不良なら、会社の責任。証拠を隠すために生存者の証言を防ぐ隠蔽工作??

クレアが突き止めようと、奔走する。やがて、患者の一人と恋に落ち、徐々に全貌が見えてくる。。。実は、、、その飛行機の乗客と乗務員は全員死亡していたのだ!! そして、クレアも同じ飛行機事故に遭った一人だった。カウンセリングを受けていた人達とクレアは、自分が急に死んだ事実を受け止められない魂だった。そして、参加者がだんだん減っていったのは、それを受け入れ、先に成仏したからだ。なにより、素晴らしいと思ったのは、先に死を受け入れた魂が、クレア自らそのことに気付くまで、同じ世界に留まり見守る姿だった。

やられた。それで、アースカラー!!色が綺麗。最後にクレアの自宅に姉が訪れた時、窓から柔らかい光が差していた。この光を見て、自然に涙が流れた。(映画のレビューになってしまった。)

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